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2025/10/07

各地で進む民泊規制強化、今後の対応と不動産業界の心構え

近年、民泊をめぐるトラブルの増加を背景に、全国の自治体で規制強化の動きが加速しています。大阪市では、特区民泊の新規受付が停止され、既存施設に対しても監督体制の強化が進められています。
特に生活環境の悪化や騒音・ゴミ問題など、地域住民からの苦情が増加しており、行政としても「放置できない段階」に入ったといえます。一方、東京都内でも同様の流れが顕著です。

 

豊島区では2026年7月の施行を目指し、民泊営業を夏休み(7月1日~8月31日)と冬休み(12月20日~1月10日)の84日間に限定する条例改正案を発表しました。さらに、住居専用地域や文教地区では新規施設を認めない方針が示され、事実上の新規開業禁止に近い内容となっています。既存施設であっても例外ではなく、営業期間の大幅短縮や地域住民説明会の義務化、日本国内代理人の設置義務など、運営負担は一層重くなる見込みです。このような動きの背景には、届出件数の急増と、苦情・相談件数の増加があります。
 

たとえば豊島区では、2023年度の届出件数993件が翌年度には1,400件を超え、苦情は120件に上りました。内容は騒音・ごみ放置・標識不備・連絡不通など生活環境に関わる問題が中心で、住民の不安や不信感を高めています。

 

不動産仲介の立場から見ると、今後新たに民泊事業を始めることは極めてリスクが高いといえます。短期間の営業しか認められず、初期投資の回収が困難になる可能性が高いからです。また、既存オーナーにとっても、条例改正による収益性の悪化や運営制約への対応が求められます。
特に地域との信頼関係を重視し、苦情への迅速な対応、法令遵守体制の強化が欠かせません。

 

我々不動産仲介会社としては、こうした法改正の動向を正確に把握し、投資家・オーナーに対して現実的かつリスクを踏まえた助言を行う責任があります。短期的な収益を追うよりも、安定した不動産活用を中長期的視点で検討することが、今後の不動産戦略の鍵となるでしょう。
 

「いま始めない勇気」と「続けるための慎重な計画」――この二つを意識して行動することが、民泊規制時代を生き抜くための第一歩です。